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0 4 2 9  つくばエクスプレス・柏の葉キャンパス 
所用で柏キャンパスへ。

秋葉原の大深度を出発したつくばエクスプレスは、荒川をひかえた南千住・北千住あたりで一度地上へ顔をだすが、その後しばらくするとまた地中へもぐりこみ、次に地上にあがるときにはもう、典型的な東京郊外の景色の中を、それに似つかわしくない速度で疾走している。

秋葉原という、いわば東京の現時代的中心から、郊外の景色へと車窓が入れ替わっていく順当な視覚的プロセスを断絶される乗客たちは、最高時速130kmという驚異的な速度の中で、「東京」にたいする自らのリアルタイムのポジションのありかを、急速に見失っていく。(あるいはその感覚こそが、秋葉原つくば間を45分で結ぶという信じがたい利便性の意識に、少なからず転化しているともいえるのだけれども。)

ちょうど30分で「柏の葉キャンパス駅」に到着する。造成途中の広大な土地を、切り開かれた森のエッジが囲い込み、視線のずっと向こうから、スケールアウトした高架がまっすぐに伸びてきている。駅は無論立派で、まもなくオープンするという巨大なショッピングモールがそれに隣接して建てられている。周囲にひろがる空白とはまったく不釣合いなその密接の図式は、これから開発されていく街の光景の模範的一端を示しているかのようだ。

午後8時。あたりは暗く、晩夏の虫の鳴き声に騒々しくつつまれている。そんな風景とはどのような脈絡も結ばない高架が、ただ相変わらず質実に存在していて、縁のみえない闇の中に際立って浮かんでいる。その静謐な、このままではなにも物事が起こらないような非関係的な図式を、なんとかして打ち破ろうとするかのように、時折高架の向こうから猛スピードで光の団塊が接近してくるが、残念ながらその誇るべき光景を鑑賞する人間は、ここにはまだあまりいない。遠くの国際空港を離発着する航空機の赤い光が、頭上でいくつか明滅している。

by frdmoptn | 2006-09-09 14:10
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