人気ブログランキング | 話題のタグを見る
0 2 0 8  現示によって存在し始める場 
0 2 0 8  現示によって存在し始める場 _c0006990_17343092.jpgリヨン市庁舎前、テロー広場
8月9日、午前11時。
都市圏人口200万のリヨン市はフランス第二の都市で、その歴史的街並みは世界遺産に登録されている。ジャン・ヌーベルによる改修が行われたリヨンオペラ座は、この市庁舎のちょうど裏手にあたる(この写真では、正面市庁舎の左横の路地を奥に入っていったところ)。リヨンへは主にラ・トゥーレットを見るために行ったのだが、ここではこの広場について。

広場の石畳にはグリッドが刻まれ、グリッド中央の石板からは水が噴き出ている。 いくつもの小さな噴水の間を縫って広場を横切る感覚が、なんとも気持ちいい。 この69個の噴水は、芸術家ダニエル・ビュランの考案。彼はパリのパレ・ロワイヤルの石柱群も手がけているが、なるほど、このグリッドのデザインに、どこか通じるものがある。ある大きさを持ったフラットなスペースにグリッドを暗示させ、その空間的広がりを強調する、という表現にも注目すべきだが、ここではそれとは少し違う方向から。

広場全体に敷き詰められた石板は、9×9枚でひとつのユニットを形成し、ユニット中央の3×3枚が噴水を構成している。でもその3×3枚は、ただ周囲に排水の溝があるだけで、他の石板と比べて、材質、高低差、なんら変わらない。水を噴き出すのは、3×3の中央の一枚で、そこから湧いた水は、9枚の石板の上を濡らしながら、周囲の溝に吸い込まれる。フラットな地面から湧き出た、いくつもの小さな噴水。

0 2 0 8  現示によって存在し始める場 _c0006990_17344162.jpg

注目したいのは、噴水が、モノではなく、エリアとして存在しているということ。エリアの現示。この場合エリアを「現示」しているのは水で、その現示(この場合、水が流れていること)がなければ、ここが噴水であるとはわからない。水の存在によって、僕らは噴水という意味を見出している。

一見同じなんだけれども、「現示」の介入によって、それは突然、決定的に異なるものとして立ち現れる。なんらかの現示によって、その「場」の意味を知る。結果、「場」自体が、何かを語り始めるということ。

現示による場の認知→生成。そこに存在し始めるのは、あるいは建築において「内―外」の環境境界に匹敵するほどの、接続性/乖離性なのではないか。そしてそれは、空間同士の新たな「関係」の捉えにもなりうるんじゃないか。非常にデリケートでアイマイな感覚だが、こういった点がとても興味深い。

関連記事 : 0 1 6 5  新しいコネクション
by frdmoptn | 2005-02-01 18:40
このページの一番上へ

Copyright © OSADA,Tatsuro. All Rights Reserved. Top